“ボール(Ball)パーク” の中の “ボウル(Bowl)広場”
我々がプロジェクトに関わることになったのは、公園施設(小田南公園野球場・多目的広場)と阪神タイガース専用のファーム施設(スタジアム・室内練習場・選手寮など)の最適配置が決まった頃であった。
既存公園の一部を存置活用し、造成に影響がない外周林は保存する。また、市民の思い入れのあるイチョウや梅といった木々については、移植するとの方針が示されていたが、限られた余地の中で、いかに既存公園の記憶を留め、新しいファーム施設と都市公園を融合させるか?が、我々に課された問いであった。

そこで注目したのが、既存公園に刻まれていた『獣道』の存在である。多くの市民が散歩に訪れていた公園には、出入りするのに都合の良い場所やアンジュレーションのある樹林の中に獣道が出来ていたのである。そうした市民利用の痕跡を頼りに、新たな出入口を設けるとともに、平坦な園路ではなく、あえて身体的な負荷が感じられるアンジュレーションのある園路設定を、既存園路に見られた連続R線形で調えることを試みた。そして、手摺り不要なユニバーサルな縦断勾配によって、スタジアム2階コンコースと繋いだ結果、多目的広場は“ボール(Ball)パーク”の中の“ボウル(Bowl)”のような形となり、円形で求心性のある場となった。


ボウル広場と外周園路の間は、既存樹を移植する棚田のような『ひな壇造成』を提案した。敷地内には、阪神・淡路大震災時に集積されたと思われる自然石が大量に残っていたため、処分するに困るのであれば土留めの素材として活用すれば良いと考えたためだ。このような立体的な修景を行った結果、搬出処分しなければならなかった土工事量は千立米単位で縮減でき、自然石の処分量も減らすことができた。また、処分予定であった巨石の活用して、休憩地や遊び場にもなるストーンサークルを設けた。


新たに植栽した木々の生長とともに、地域住民と阪神タイガースファンが共存し、多くの方に親しまれるボールパークに成長していくことが楽しみである。
住 所:兵庫県尼崎市杭瀬南新町3丁目3
規 模:約56,000㎡(第一工区のみ)
竣 工:2025年2月
協 働:久米設計
掲 載:新建築 2025年4月号